神奈川の停電対策に蓄電池は必要?浸水で壊れる前に確認すべき設置高さ

更新日:2026年9月7日/一次情報の確認日:2026年9月7日

2019年の台風15号で、千葉県は約576,100戸が停電しました。

同じ台風で、神奈川県は約23,900戸。桁が2つ違います。

房総半島に上陸した台風が東京湾を北上したため、暴風の直撃を受けたのは千葉でした。神奈川で「台風の停電対策に蓄電池を」という話をするとき、この事実は無視できません。神奈川の停電リスクは、暴風ではないところにあります。

この記事では、神奈川で本当に想定すべき停電と、それに対して蓄電池が有効なのかを、県と国の公表資料から整理します。結論を先に言うと、神奈川で最も重要な確認事項は容量でも価格でもありません。設置する高さです。

補助金は市区町村ごとに金額も条件も違います

  • 同じ容量でも、住む自治体で実質負担額が数十万円変わる
  • 先着順で、予算に達し次第終了する制度が多い
  • 交付決定前に着工すると対象外になる自治体がある
  • 国のDR蓄電池補助金は2026年5月29日で終了。使えるのは自治体の制度が中心

地域の制度に詳しい業者かどうかで、受け取れる額も申請の通りやすさも変わります。契約を急ぐ前に、複数社の見積もりを同じ条件で並べてください。

※見積もりを取っても契約の義務はありません。補助金は年度途中で受付を終了する場合があります。

目次

神奈川の本命は台風19号|箱根で総雨量1,000ミリ

2019年は2つの台風が関東を襲いました。9月の15号(令和元年房総半島台風)と、10月の19号(令和元年東日本台風)です。神奈川に大きな被害をもたらしたのは、後者でした。

台風15号(9月)台風19号(10月)
災害の型暴風記録的大雨
上陸地点千葉市付近伊豆半島
神奈川の停電約23,900戸広範囲
千葉の停電約576,100戸
神奈川で起きたこと限定的箱根町で総雨量1,000ミリ、大雨特別警報
出典:経済産業省「令和元年台風第15号による被害・対応状況について」(2019年9月10日6時30分時点)/内閣府「令和元年台風第15号・第19号をはじめとした一連の災害に係る検証レポート(最終とりまとめ)」(2020年3月)

台風19号では、10日からの総雨量が箱根町で1,000ミリに達しました。東日本を中心に17地点で500ミリを超えるなか、突出した数字です。10月12日15時30分には、静岡県・神奈川県・東京都・埼玉県・群馬県・山梨県・長野県の7都県に大雨特別警報が発表されました。

暴風で電柱が倒れる千葉型の停電と、豪雨で浸水・土砂災害が起きる神奈川型の停電。備え方がまったく違います。

神奈川の地形が生むリスク

県西部の箱根・丹沢山系は急峻で、短時間に大量の雨が降ると土砂災害が起きやすい。相模原市緑区や山北町、清川村といった山間部では、道路が寸断されれば復旧班の到達が遅れます。

一方、川崎市や横浜市の低地部では、多摩川・鶴見川・境川の水位上昇による内水氾濫が課題になります。武蔵小杉のタワーマンションで電気設備が浸水し、停電と断水が同時に起きた事例は、この台風19号のときのものです。

山と海と大河川。同じ県内でも、想定すべき災害が3種類あります。

浸水すると蓄電池は壊れる|神奈川で最重要の論点

ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。

屋外設置型の蓄電池は、水に浸かると故障します。停電に備えて買った設備が、その停電を起こした豪雨で使えなくなる。神奈川ではこれが現実的なシナリオです。

浸水した蓄電池には、感電と発火の危険があります。水が引いた後も、自分で電源を入れ直そうとしないでください。異音・異臭・変形がある場合は触らず、施工店とメーカーに連絡するのが原則です。

設置高さを決める手順

  1. ハザードマップで自宅の浸水想定深を調べる:市町村の公式サイト、または国土交通省の重ねるハザードマップ。洪水・内水・高潮の3種類を別々に確認する
  2. 想定深を施工店に伝える:「0.5〜3.0m未満」など、区分をそのまま伝えればいい
  3. 基礎の嵩上げを相談する:コンクリート基礎を数十センチ上げるだけで結果が変わることがある
  4. 屋内設置型を検討する:想定深が大きい場合、2階に置ける屋内型のほうが現実的なことがある
  5. パワコンと分電盤の位置も確認する:蓄電池だけ高くしても、パワコンが浸かれば同じこと

5番目を見落とす業者は少なくありません。システムは最も低い機器の高さで決まります。

見積もり時に必ず聞くこと
「この設置位置は、ハザードマップの浸水想定深に対して十分ですか」
「基礎を嵩上げした場合、いくら追加になりますか」
「浸水した場合、保証や自然災害補償の対象になりますか」

3つ目が重要です。水害が補償対象外の商品もあります。神奈川で契約するなら、風災だけでなく水災が含まれるかを書面で確認してください。

三浦半島・湘南・真鶴は塩害地域

神奈川はもう1つ、機種選定に関わる条件があります。海岸線の長さです。

横須賀市、三浦市、逗子市、鎌倉市、藤沢市、茅ヶ崎市、平塚市、大磯町、二宮町、小田原市、真鶴町、湯河原町。海岸から2km以内が広範囲に及びます。

区分目安となる距離必要な仕様費用の目安
岩礁隣接地域直接波しぶきがかかる場所多くの機種が設置不可
重塩害地域海岸から200〜500m以内重塩害仕様。屋内設置を求められる場合あり標準比+10〜20万円程度
塩害地域海岸から2km以内塩害仕様標準と同価格〜数万円高
標準地域上記以外標準仕様
区分の距離は目安であり、地形・風向き・周辺環境によって変わります。基準はメーカーごとに異なる場合があります

塩害仕様でない機種を塩害地域に設置すると、メーカー保証が適用されないケースがあります。設置後に判明しても手遅れです。契約前に、施工店へ「この住所は塩害区分でどこに当たるか」を書面で確認してください。

三浦半島の一部では、浸水と塩害の両方に該当します。この場合は選べる機種がかなり絞られるので、容量の希望を伝える前に、まず設置可能な機種を出してもらう順序で進めてください。

神奈川は大正関東地震の震源域の上にある

豪雨だけではありません。地震の想定も、東京とは性格が違います。

東京都防災会議が2022年5月に公表した被害想定では、5つの地震が対象になっています。そのうち大正関東地震(M8)は、1923年の関東大震災と同型の地震です。震源域は相模トラフ沿い、つまり神奈川県の直下から相模湾にかけて広がります。

想定地震規模30年以内の発生確率神奈川への影響
都心南部直下地震M7.370%県東部で揺れ
大正関東地震M80〜6%震源域の直上
南海トラフ巨大地震M970〜80%長周期地震動・津波
出典:東京都防災会議「首都直下地震等による東京の被害想定」(2022年5月25日公表)。確率は同資料の記載による

発生確率は都心南部直下地震のほうが高い。ただし大正関東地震が起きた場合、神奈川の被害は東京より大きくなります。沿岸部では津波も想定に入ります。

津波浸水想定区域に該当する場合、蓄電池を設置する意味そのものを見直す必要があります。避難が最優先で、在宅避難を前提にした備えは成立しません。県や市町村の津波ハザードマップを、洪水とは別に確認してください。

蓄電池は何日もつか

容量最小(冷蔵庫・照明・通信/1.8kWh・日)標準(2.5kWh・日)エアコンあり(5.5kWh・日)
5.0kWh約2.7日約2.0日1日もたない
6.5kWh約3.6日約2.6日約1.2日
9.8kWh約5.4日約3.9日約1.8日
12.0kWh約6.7日約4.8日約2.2日
16.6kWh約9.2日約6.6日約3.0日
実効容量は定格の80〜90%程度になるため、実際はこれより短くなります

神奈川の停電は、千葉のような2週間規模にはなりにくい。台風19号でも、暴風による大規模な電柱倒壊は起きていません。県東部の市街地なら、9.8kWh前後で実用的な備えになります。

県西部の山間部は別です。道路が寸断されれば復旧は長引きます。相模原市緑区、山北町、清川村、松田町、南足柄市といった地域では、太陽光との併用を前提に12kWh以上を検討する価値があります。

なお停電時に何が動くかを決めるのは、容量ではなく定格出力です。家電別の実数は蓄電池は停電で本当に役立つ?容量kWhより出力kWで決まる16家電の実数にまとめています。

補助金は市区町村ごとに金額も条件も違います

  • 同じ容量でも、住む自治体で実質負担額が数十万円変わる
  • 先着順で、予算に達し次第終了する制度が多い
  • 交付決定前に着工すると対象外になる自治体がある
  • 国のDR蓄電池補助金は2026年5月29日で終了。使えるのは自治体の制度が中心

地域の制度に詳しい業者かどうかで、受け取れる額も申請の通りやすさも変わります。契約を急ぐ前に、複数社の見積もりを同じ条件で並べてください。

※見積もりを取っても契約の義務はありません。補助金は年度途中で受付を終了する場合があります。

横浜・川崎はマンション比率が高い

神奈川の人口は横浜市と川崎市に集中しており、この2市は共同住宅の比率が高い地域です。

家庭用蓄電池は基本的に戸建て向けの設備です。分譲マンションの専有部に置く場合、バルコニーは共用部にあたるため管理規約の制約を受けます。避難通路の確保義務もあり、屋外設置型は原則として置けません。賃貸なら、まず不可能と考えてください。

マンションで停電に備えるなら、ポータブル電源が現実的です。1〜2kWh級で、冷蔵庫とスマホと照明を数時間から1日ほど賄えます。工事も承認も不要。

ただし高層階では、停電時に受水槽ポンプが止まって断水する点に注意が必要です。台風19号のとき、川崎市内のタワーマンションで電気設備が浸水し、停電と断水が同時に発生しました。水は電気で押し上げられているということを、備蓄の計画に入れてください。

見積もりを取る段階の注意点は神奈川で蓄電池の見積もりを取る前に|県の補助は太陽光とセットが条件にまとめています。

神奈川県の補助金|第2期は先着約500件

※この項目は2026年9月7日時点の情報です。先着順のため、受付状況は日々変わります。申請前に必ず神奈川県の公式サイトで最新の状況をご確認ください。

神奈川県は令和8年度も「神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金」を実施しています。

蓄電システム1台につき15万円(上限)
太陽光発電1kWあたり7万円(上限)
重要な条件太陽光と蓄電池の同時導入が必要
第1期2026年5月11日〜6月30日(開始2日で受付終了)
第2期2026年9月7日8時30分〜9月30日
第2期の申請方法電子申請システムのみ(郵送不可)
第2期の受付件数先着順・およそ500件程度
工事完了期限2027年3月31日まで
2026年9月7日時点。金額・条件・受付状況は神奈川県の公式サイトでご確認ください

押さえるべき点が3つあります。

①蓄電池だけでは対象にならない

県の制度は太陽光と蓄電池の同時導入が条件です。すでに太陽光がある家に蓄電池だけ追加する場合、県の15万円は使えません。市町村の制度を確認することになります。

②第1期は2日で終わっている

第1期は開始からわずか2日で受付が締め切られました。第2期は先着約500件と件数が明示されているぶん、さらに早く埋まる可能性があります。「9月30日まである」と考えると間に合いません。

③型番と見積書が揃っていないと申請できない

申請には機種の型番、見積書、住宅関係の書類が必要です。業者選びと見積もり取得が終わっていない状態では、そもそも申請できません。先着順の制度では、準備が終わっている人から埋まっていきます。

第2期に間に合わなかった場合でも、市町村の補助金は別枠で残っています。横浜市はYGrEPで県との併用が可能とされており、他の市町でも独自制度があります。県だけを見て諦めないでください。

なお国の需要家主導型(DR)蓄電池補助金は2026年5月29日で終了しており、再開は示されていません。

停電が起きる前に、今日できること

  • ハザードマップで浸水想定深を確認する:洪水・内水・高潮・津波を別々に。神奈川ではこれが最優先
  • 東京電力パワーグリッドの停電情報アプリを入れておく
  • 太陽光がある家は自立運転の切替を1度試す:ブレーカーを落として確認するのが確実
  • 浴槽に水を張る習慣をつける:マンションの高層階なら特に
  • カセットコンロとボンベの在庫確認:ボンベには使用期限がある
  • 火災保険に水災補償が付いているか確認する:風災だけの契約になっていないか

1番目と6番目は、蓄電池を買うかどうかに関係なく効きます。

よくある質問

神奈川は千葉ほど停電しないのですか

台風15号の実績では、千葉が約576,100戸に対して神奈川は約23,900戸でした。ただしこれは暴風型の台風での話です。神奈川は豪雨による浸水と土砂災害のリスクが高く、台風19号では箱根町で総雨量1,000ミリを記録し、大雨特別警報が発表されています。停電しないのではなく、停電の原因が違います。

蓄電池が浸水したらどうなりますか

故障します。感電と発火の危険があるため、水が引いた後も自分で電源を入れ直さないでください。異音・異臭・変形がある場合は触らず、施工店とメーカーに連絡してください。修理費が補償されるかは、自然災害補償に水災が含まれているかによります。

浸水想定区域でも設置できますか

基礎の嵩上げや屋内設置型の選択で対応できる場合があります。ハザードマップの浸水想定深を施工店に伝えて、設置高さを相談してください。蓄電池だけでなく、パワーコンディショナと分電盤の高さも確認が必要です。システムは最も低い機器の高さで決まります。

海の近くですが設置できますか

海岸から2km以内なら塩害仕様、200〜500m以内なら重塩害仕様が必要になるのが一般的な目安です。直接波しぶきがかかる場所は多くの機種が設置不可となります。三浦半島や湘南では該当する地域が広いので、必ず現地調査で判定してもらってください。

県の補助金は蓄電池だけでも使えますか

使えません。県の制度は太陽光と蓄電池の同時導入が条件です。すでに太陽光がある家に蓄電池だけ追加する場合は、お住まいの市町村の制度を確認してください。

第2期の受付に間に合わなかったら

市町村の補助金は別枠で残っています。横浜市のYGrEPをはじめ、多くの市町で独自制度があります。また県の制度は年度ごとに実施されているため、次年度の公募を待つという選択肢もあります。ただし制度内容は年度で変わるため、確定した話ではありません。

何kWhを選べばいいですか

県東部の市街地なら9.8kWh前後で実用的です。県西部の山間部で復旧の遅れを想定するなら、太陽光との併用を前提に12kWh以上を検討してください。ただし塩害地域や浸水想定区域では選べる機種が限られるため、容量より先に設置条件を確認する順序をおすすめします。

マンションでも置けますか

賃貸はほぼ不可能です。分譲の専有部はバルコニーが共用部にあたるため管理規約の制約を受けます。屋内設置型なら物理的に可能な場合がありますが、管理組合の承認が必要です。個人で完結させたいならポータブル電源が現実的です。

まとめ

  1. 台風15号の神奈川は約23,900戸。千葉の約576,100戸とは桁が違う
  2. 神奈川の本命は台風19号型の豪雨。箱根町で総雨量1,000ミリ、大雨特別警報
  3. 浸水すると蓄電池は壊れる。設置高さの確認が容量選びより先
  4. パワコンと分電盤の高さも確認する。システムは最も低い機器で決まる
  5. 三浦半島・湘南・西湘は塩害区分の確認が必要
  6. 自然災害補償に水災が含まれるかを書面で確認する
  7. 県の補助金は太陽光との同時導入が条件。第2期は先着約500件

神奈川で蓄電池を検討するなら、最初にやることは見積もりではありません。ハザードマップを開いて、自宅の浸水想定深を確認することです。

そこが決まらないと、置ける機種も決まりません。

補助金は市区町村ごとに金額も条件も違います

  • 同じ容量でも、住む自治体で実質負担額が数十万円変わる
  • 先着順で、予算に達し次第終了する制度が多い
  • 交付決定前に着工すると対象外になる自治体がある
  • 国のDR蓄電池補助金は2026年5月29日で終了。使えるのは自治体の制度が中心

地域の制度に詳しい業者かどうかで、受け取れる額も申請の通りやすさも変わります。契約を急ぐ前に、複数社の見積もりを同じ条件で並べてください。

※見積もりを取っても契約の義務はありません。補助金は年度途中で受付を終了する場合があります。

参考にした一次情報
経済産業省「令和元年台風第15号による被害・対応状況について(9月10日6時30分時点)」/内閣府「令和元年台風第15号・第19号をはじめとした一連の災害に係る検証レポート(最終とりまとめ)」(2020年3月)/神奈川県「令和8年度神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金」/東京都防災会議「首都直下地震等による東京の被害想定」(2022年5月25日公表)

※消費電力量・持続時間は一般的な数値からの試算です。機器の年式・設置条件により変動します。塩害区分および対応機種の基準はメーカーにより異なります。補助金は先着順で、受付期間内でも予算に達し次第終了します。申請前に必ず神奈川県および各市町村の公式サイトで最新の状況をご確認ください。

目次